´20年2月15日~16日 八ヶ岳 黒百合ヒュッテに雨が降る!

f:id:arakabu625:20200216160530j:image(二日目の朝。黒百合ヒュッテの前で)

⛰️雪山シーズン真っ只中のはずなのに、暖冬で全国的な雪不足。廃業を決めたスキー場まで出てくる始末です。とは言え、さすがに八ヶ岳なら大丈夫だろうと、縦走部で天狗岳へ行ってまいりました。そのあたりの顛末を書かせていただきましたので、よろしければ、ご一読のほど、お願いいたします。

 

■ステップアップ

北八ヶ岳天狗岳は、雪山を始めて2年目の人、もしくはビギナーから少しステップアップを図ろうと考えている人向けによく推奨されている山です。私が思うに、その理由は次のようなものでしょう。

森林限界を越えた雪山登山を経験できる

森林限界を越えてからの行動距離と時間がそれほど長くない

・厳冬期も営業している山小屋『黒百合ヒュッテ』を起点にすれば、標高差300m足らずで登頂できる

・何かトラブルに見舞われても黒百合ヒュッテに逃げ込める

 

私たち縦走部でも、わりと早いうちから来年の雪山シーズンにはここに来ようねと決めていました。2年前に素通りした『黒百合ヒュッテ』に泊まってみたい!というのもあったし。

 

結果的には、ちか&まりの雪山装備を整えるいいモチベーションにもなったと思っています。前回の黒斑山までに冬靴と12本爪アイゼンと、持っては来なかったけどピッケルを準備した二人でしたが、私がしつこく「雪山にはワカンが必携だぞ~、森林限界をなめんなよ~」と脅して、ワカンも買い揃えてもらいました😅

f:id:arakabu625:20200217195946j:image(まりちゃんのリュックにくくりつけられた黒いワカンケース)

 

■出発

新宿7時発のあずさ1号に乗るため、まだ暗い道を私はウキウキしながら北浦和駅に向かって歩いていました。この時点ですでに登山モード全開です。ふと前を見ると、私と同じように登山リュックを背負った女性が100mほど先を歩いているではありませんか。

 

(そうかそうか、北浦和にもこんな暗いうちから出かけていく登山愛好者がおるんやなー)と、うれしくなった私は、俄然歩くスピードを早めました。今考えると、あの時私はまるで山中を2時間さまよい、やっと自分以外の登山者を見つけたときのような、嬉しさと安心感と、そして妙な連帯意識が芽生えてしまったのだと思います。

 

駅の階段の手前でその女性に追いついた私は、満面の笑みを浮かべて「おはようございます!」と声をかけてしまいました。まさに、山ですれ違ったときに交わす挨拶のように。私の妄想では、

『今日はどちらの山まで?そうですか、私は八ヶ岳です。それじゃあお気をつけて!』

という会話までも完璧に出来上がっていましたが、相手の女性はまだ山モードに切り替わっていなかったのは言うまでもなく、ましてや2時間ぶりに人の姿を見かけた安堵感のかけらも持ち合わせていなかったのです(当たり前じゃ!)。

 

「はあっ?!?!・・・」


いきなり見ず知らずの男に声をかけられたその女性(私より少し年配な感じでした)は、驚いた顔で私を見つめて(この人誰?今日のメンバーさんにこんな人いたかしら?)←私の勝手な想像😅 というような顔のまま完全にその場で固まってしまいました。安堵感どころか、恐怖感を与えていることは明白です。

 

(まずい!)その様子で我に返った私は、逃げるように改札への階段を足早に上がっていったのでした。いやー、参った参った。

 

なんやかやで、6時半には新宿駅に到着。ここまでの道のりでストーカーまがいの事をやってしまったことはおくびにも出さず、改めて縦走部のメンバーと爽やかにおはようの挨拶を交わし、あずさ1号に乗り込みました。

 

■茅野へ、渋の湯へ

さて、今回の計画は次のようなものです。

 

【1日目】
移動:新宿→茅野(JR)、茅野駅前→渋の湯温泉(バス)
登山ルート:渋の湯登山口→黒百合ヒュッテ(泊)
※ヒュッテ前で雪山アイゼンとピッケルの使い方ミニ講習会

 

【2日目】
登山ルート:黒百合ヒュッテ→東天狗岳・西天狗岳→黒百合ヒュッテ→渋の湯
移動:(行きと同じ)
茅野駅前の居酒屋で反省会

 

麓の天気予報では今日は《晴れ》、明日は《曇り時々雨》ということで、肝心の明日がよくありません。さらに数日前から最高気温が17~8℃と暖かい日が続いており、なんと今日明日にも日本列島に春一番が吹くのではないかとテレビの天気予報が言っていました。2月中旬だというのにまったく。

 

茅野駅前でバスに乗り換え、終点の渋の湯に着いたのが10時10分頃(バス代1,200円)。準備を整え(公衆トイレあり)、11時前には入山したと思います。さあ、目指すは標高2,400mの地点に建つ黒百合ヒュッテです。

f:id:arakabu625:20200221184600j:image(出発~)

 

■黒百合ヒュッテへ

登山道はアイゼンが効く位の雪の量はしっかりとありましたが、周りの樹々に降り積もった雪はすっかり溶け落ちていました。暖冬ですもんねー。

f:id:arakabu625:20200221191339j:image(登山道)

 

足元は最初から全員12本アイゼンを装着していますが、手元にはピッケルではなくストックを持ちました。渋の湯から黒百合平(ヒュッテの建っている場所)まで、今回はストックがあれば十分な道のりだったと思います。

f:id:arakabu625:20200227131459j:image(前からまり、ちか、アイミ君)

 

すぐに暑くなって、途中二度も服を脱ぎました。私は一度目にハードシェルの下に着ていたフリースベストを脱ぎ、二度目にはハードシェルそのものも脱いでしまいました。他の登山者の人たちもみんなシャツの袖をまくり上げて登っています。春スキーの格好と言ったらいいのか、そんな感じでした。

f:id:arakabu625:20200221183021j:image(みんなシェルを脱いだ)

 

途中でこんな可愛い標識を見つけたり、

f:id:arakabu625:20200221185030j:image(アヒルの大群)

バックカントリー穂高》の太田店長の雪山講習の一行とすれ違ったりしながら、13時10分に黒百合平(標高2,400m)に到着。登山口の渋の湯から2時間半近くかかりました。

f:id:arakabu625:20200221185508j:image13:10(到着~)


明日の天気が怪しいので、黒百合平の到着時間次第ではこのまま天狗岳に登ることも考えていたのですが、これから昼食休憩+東天狗までの往復3時間半(コースタイム)では諦めるしかありません。

皆、アイゼンを外して黒百合ヒュッテにチェックインしました。(一泊二食付き9,500円)

f:id:arakabu625:20200226125709j:image(受付)

 

■雪山講習

まずは腹ごしらえです。私以外の3人はヒュッテ名物のビーフシチューセット。
f:id:arakabu625:20200226125627j:image(1,600円)

 

私はYouTubeで見つけた、やけに旨そうだったチキンカレーを迷わず頼みました。ホロホロに崩れる柔らかいモモ肉が丸ごと入ってますよ!

f:id:arakabu625:20200226130043j:image(1,800円)

 

ヒュッテの受付にいた気の良いおじさんに「前の丘で雪上訓練しようと思ってるんですけど、いいですかね?」と一応相談してみたら「もちろんいいですよ!ぜひ、やってください。このあとモンベルや他の団体もやってきて講習するみたいですよ」と言われました。

 

モンベルか~、気が重いな~)と思いながらも、みんなにもう一度アイゼンを付けてもらい、ピッケルを持って外に出ました。さあ、ちか&まり用に準備したにわか雪山講習の開催です。にわかと言いながら、実は私はこれまでにアイミ君と一緒に受けた講習を十分に反芻し、YouTubeでも同じような講習動画を何度も見直して、自分なりの理論(?)と講習の流れはほぼ完璧に出来上がっていました(お前は暇か!😅)

f:id:arakabu625:20200226131542j:image(偉そうに講習中の私)

f:id:arakabu625:20200226132535j:image(滑落停止!!)

 

アイゼンを付けての雪山歩行はフラットフッティングからキックステップまで。さらに、ピッケルの持ち方からピックを使った確保の仕方、滑落中の停止方法など、たっぷり1時間以上はやったでしょうか。途中でいくつかの団体が同じように講習をしていましたが、結局最初に始めて最後までやっていたのは私たちでした。

 

他の団体のコーチも、まさか私がど素人の付け焼き刃コーチだとは思わなかったと思います。私も途中から調子に乗ってきて、大きな声で付け焼き刃理論をぶちかましていました。

 

天狗岳だ!

訓練が一段落終えた頃、いつの間にか姿をくらましていたアイミ君が丘の上から降りてきました。

「ねえねえ、この丘を登るといい景色が見れるから行ってみない?」と言います。私は(講習手伝いもせずにどこ行ってたんだ、まったく)と心の中で不満を呟きながらもアイミ君の後に続いて丘を登って行きました。すると、

 

「わあっ!!!」


f:id:arakabu625:20200226135715j:image(手前は天狗の奥庭)

丘の上に登ると、私たちの真正面に東天狗と西天狗の二峰がくっきりと姿を現していたのです。曇り空の下でこんな景色が広がっていたとは全くの予想外でした。

 

天狗岳から右の方に視線を向けると、夕日に浮かぶ御嶽山北アルプスの峰々がよく見えました。

f:id:arakabu625:20200226140749j:image御嶽山

f:id:arakabu625:20200226141222j:image穂高連峰槍ヶ岳

 

結局、翌日は朝から雨になり、私たちは登頂を諦めてヒュッテから直接下山することになりました。なので、このときこの景色を眺められたことは本当に幸運だったと思います。(ナイス、アイミ君!)

 

そういえば、丘を登ったことで私たちはもう一つ貴重な経験をしました。それは『風』です。まだ本物はこんなものではないかもしれませんが、丘の上は凄い風が吹いていました。さすが森林限界を越えた場所の風は強いです。そんな中でも記念写真を一枚、パシャッ。

f:id:arakabu625:20200226142426j:image(と、と、撮るよ~!)

f:id:arakabu625:20200226142547j:image(アイミ君、ちか、まり。そう見えないが強風)

 

■消灯

18時に夕食、20時半に消灯で黒百合ヒュッテの夜は更けていきました。この日のヒュッテは満員で、私たちが寝た3階の屋根裏(天井が低くて立てない)は一人に一枚の布団があてがわれていましたが、下の階はそうはいかなかったみたいです。

 

実は私は数日前から風邪気味で、前日も皆には↓のようなLINEを送っていました。結局は熱も出ず、元気に出発したのですが。

f:id:arakabu625:20200226144009j:image(前日に入れたLINE)

消灯後は布団の中で少し出始めていた咳を堪えていましたが、いつしか眠ってしまいました。

 

■翌朝、下山

翌日は朝から雨。ヒュッテの出入り口に掛けてある温度計は+2℃を示していました。この雨と、昨日経験した風が吹き付けるなかで2,700m近い雪山を登ることは危険だし、なんといっても楽しくない。ということで、早々に下山を決めました。

 

(また今度だな)

私は山でそう思う度に、私たちの母校T高校山岳部出身にして縦走部顧問のうがちんが言ってくれた金言を思い出します。彼は、2年前の夏、台風が近づく北アルプス表銀座をテント泊で縦走しようとした私たちに「止めとけ」と冷静にアドバイスしてくれました。そして、

「山の『また今度』はよくある話だよ」と説いてくれたのです。

 

私はその言葉に二つの意味を読み取りました。一つは、山の天候は変わりやすいから一喜一憂するなというような意味。二つ目は、悪天候の時は潔く撤退しろ。せっかく休みを取ってここまで来たんだから、などという気持ちが無理な行動につながり遭難に至ってしまう元凶なんだ、と。また今度があるじゃないかと、また次来ればいいさと。

 

悪天候に計画の変更を余儀なくされたとき、うがちんのこの金言はいつも私を慰め、元気付けてくれるのです。


f:id:arakabu625:20200226151217j:image8:22(出発の朝)

 

雨の登山道をひたすら下り、2時間かからずに下山口の渋の湯に着きました。

f:id:arakabu625:20200226151917j:image10:11(渋の湯前で雨宿り)

渋の湯からはタクシーに乗り、途中で温泉に寄って汗と疲れを落としてから茅野駅に向かいました。(茅野→あずさ→新宿)

新宿では居酒屋の開店待ちをしてなだれ込み、

f:id:arakabu625:20200226152322j:image17:08(カンパーイ!お疲れさま!)

 

少しだけ危険が伴う山登りという趣味。一番大事なのは、多分こうやって無事に帰り着くことなんでしょう。そんな思いを強くした、今回の八ヶ岳でした。(ゴホッゴホッ😷)

 

(終わり)

 

その他のスナップ

f:id:arakabu625:20200226152935j:image(黒百合ヒュッテ内の様子)

f:id:arakabu625:20200226153025j:image(か、風が…)

f:id:arakabu625:20200226153644j:image(暑ち~💦)

f:id:arakabu625:20200226153248j:image(ソリ遊びもしました。ギャーッ)

f:id:arakabu625:20200226153514j:image(アイミ君、神になる)

 

(おしまい)

ここまでお読み頂きまして、大変有難うございました。本ブログに関して、ご意見・ご感想などございましたら、下記アドレスまでメールをお願いいたします。お気軽にどーぞ。

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