'18年7月27日~29日 北アルプス 嵐の燕岳~常念岳!(前編)

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⛰️7月の27日から29日の金土日にかけて、北アルプス・燕岳〜常念岳へ2泊3日の縦走を敢行してきました。ついについにの北アルプスです。メンバーはいつものアイミ君・ちかちゃん・まりちゃんと私の4人。台風12号🌀☔が迫り来る中、さてさてどんな山行となりますやら。以下、ご一読いただければ幸いでございます。

 

■(前日)穂高

とうとうこの日がやってきた。今夜の夜行バスで北アルプスへ向かう。燕岳から常念岳を2泊3日で縦走するのだ。前回の八ヶ岳に続いて今回も部長のちかちゃん以外は初めての北アルプス。ワクワクが止まらない。早めに帰宅した俺は急いで風呂と夕食を済ませ、荷物を詰め込んだグレゴリーを背負って再び北浦和駅から電車に乗り込んだ。待ち合わせは新宿駅の新南改札に22時半だ。1時間後、予定通りに全員が合流。他の3人のメンバーも俺と同じように「とうとうこの日がやってきたね」という顔をしていた。

f:id:arakabu625:20180731194610j:imageバスタ新宿

 

23時05分、俺たちを乗せた安曇野・白馬行きの高速バスが夜のバスタ新宿を静かに出発した。

 

■(1日目)穂高から中房温泉へ

空も白み始めた4時半頃、穂高神社(長野県安曇野市)の前辺りにバスが到着。疲れた、腰が痛い💧バスはこのあとも白馬方面まで登山者を運ぶ。俺たちは登山口のある中房温泉行のバスに乗り換えるため、JR穂高駅へ歩き出した。ぼんやりと夜が明けてきていた。

 

駅前のロータリーではタクシーが「バス代でいいよ、4人いない?」とバスを待つ登山者たちに白タクまがいのことをやっている。そんなほぼ白タクを2台やり過ごしてバスに乗り込んだが、途中でいくつか停留所を経由するし、そのつど荷物のでかい登山者の乗車は時間がかかるので、やっぱ白タクのほうが良かったかなとアイミ君とささやき合った。

f:id:arakabu625:20180731194859j:image(バスを待つ)


1時間ほどで中房温泉に着き、準備を済ませて6時半に入山。ついに迎珍縦走部の北アルプス山行が始まったのだ。

f:id:arakabu625:20191029122926j:image(中房温泉登山口)

 

■テント泊中止!

登り始めてすぐにウィンドブレーカーを脱ぎ、半袖のTシャツ一枚になった。背中の荷物が軽いのでペースが上がりそうになるのを抑えつつイーブンペースを守る。そう、実はメンバー全員の背中の荷物が昨日急に軽くなっていた。それには理由がある。

 

今週に入り、フィリピン沖に発生した台風12号が関東に向かって北上してきていた。そしてなんと今回の山行計画2日目(燕山荘から常念小屋へ縦走し、テント泊する日)に関東近辺に上陸しそうな勢いなのだ。進路予想は刻々と変わってはいたが、台風の影響は避けられないだろう。しかし、経験の浅い俺たちは台風と自分たちの山行がそこまで関係しているという想像をできないというかしたくなかったというか、3か月も前から計画を進めてきたのに台風なんかで邪魔されるはずがないと思い込んで、心配はしつつも計画を変えようと言い出す者はいなかったのだ。俺もまずは現地に行ってみて、いざとなれば撤退すればいいさと漠然と考えていただけだった。

f:id:arakabu625:20180801113646j:image台風が近づいてくる…

 

出発の前日、そんな俺たちを見かねた縦走部顧問のうがちんから、テント泊で台風に遭遇した自らの経験をもとに計画の見直しを勧めるLINEが入ってきた。うがちんはT高校山岳部出身で現在も現役で山に登っている同級生だ。うがちんは、台風時のテント泊の危険を説くとともに、激しい風雨が予想される天候での行動はなるべく荷物を減らして身軽にしたほうがいいと強く助言してくれた。

 

持つべきものは友である。うがちんの助言でやっと目が覚めた俺は、台風が近づいているときに山でテント泊しようとしていることのリスクをこのとき自分事としてようやく認識できたんだと思う。それから急いでメンバー全員の合意を取ってテント泊の中止と常念小屋の宿泊予約と、そして2日目の台風の動き次第では中房温泉へ引き返すセカンドプランを皆で練った。

 

それが出発前日のことで、全員がテント泊から山小屋泊りの装備に変えたのだ。2日目、燕山荘から常念岳に向かうあの2700m前後の稜線を強い風雨にさらされながら6時間歩いた自分の背中に、もしもテント泊装備満載のバルトロが乗っかっていたらと思うと今更ながらぞっとする。長くなったが、これがリュックが軽くなった顛末なのだった。

 

■山頂へ

暑い💦 手元の温度計は20℃を下回っていたが、登りは半端なく汗が出る。無類の汗かきのちかちゃんは頭から水をかぶったように髪の毛が濡れていた。見上げると真っ青な空が木々の間に広がっている。台風が近づいているなんて嘘みたいだ。

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中房温泉から約3時間で合戦小屋に到着。みんなで名物のスイカにむしゃぶりつく。「これまで食べてきたスイカの中で一番うまかった」とあとでアイミ君が述懐していたのがおかしかった。

f:id:arakabu625:20191029123048j:image(人生最高のスイカを食べるアイミ君)

 

合戦小屋のスイカで水分と糖分と元気を補給した俺たちは再び歩き始めた。ここから先の合戦尾根は北アルプス三大急登の一つに数えられる急坂が続くという。地図には鎖場もあると書いていたが、どちらも大したことなかったな。

何度目かの休憩場所で休んでいたら、誰かが誰かに話しかけている声が聞こえた。


「向こうに槍が見えるよ」


慌てて森の日陰から明るいほうに移動して、木々の向こうの稜線沿いに右の方へ目をやる。ああ本当だ、遥か彼方に槍の穂先が見えていた。

f:id:arakabu625:20180801140431j:image(人生初槍)

 

あれが槍ヶ岳か。こんなところからもう見えちゃうんだ。やっぱすごいな北アルプス

 

疲れてきた頃にスイカと槍のダブルで元気を注入してくるなんて、さすが人気のコースだけある。高度を上げていくほどに槍ヶ岳もそのベールを脱いできた。山肌に雪を残している山容がかっこいい。

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もうすぐだ、ほら青空と緑の間に燕山荘も見えてきた。それにしても、こんな高い場所をたくさんのトンボが飛んでるんだな。

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11時18分、ついに俺たちは北アルプスの稜線に立った。標高はすでに2700mを超えている。しかし《息を飲むような景色》とはよく言ったものだ。稜線を吹き抜ける爽やかな風に火照った体を鎮めながら、目の前に広がる雄大な景色に俺たちはみんな息を飲んでいた。

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「凄いな…」

「凄いね…」

「凄いでしょう…」

なんだか皆でそんなことばかり言ってたような気がする。ついにここまで来たね、とまりちゃんの肩をポンと叩くと、「うん」と答えたまりちゃんは今にも泣きだしそうだった。

 

f:id:arakabu625:20180801184227j:image(視線の向こうは槍ヶ岳

f:id:arakabu625:20191029123133j:image(こんな写真を撮れる日が来るとは)

 

今夜泊まる燕山荘で昼ごはんを食べ、荷物をデポして燕岳へ向かう。俺以外の3人は頂上アタック用のサブバッグを用意していたのには驚いた😲。

f:id:arakabu625:20180801185929j:image(燕岳)

 

燕岳は北アルプスの女王と言われているらしい。花崗岩が露出してやけに白い山肌が特色だ。長年の風雨で滑らかに削られた岩と際立つ白さが女王と言われる由縁だろうか。山頂までの道のりにはその花崗岩が細かな岩粒となって積もっていて、足を踏み込むたびにザクッザクッと音がする。

f:id:arakabu625:20180801182400j:image(イルカ岩とまりちゃん)

f:id:arakabu625:20180801182446j:image(メガネ岩と3人)

 

イルカ岩とメガネ岩の間の斜面にコマクサの群落を見つけた。コマクサも高山植物の女王と言われているらしい。ここは女王だらけだ。コマクサの実物を見たのは初めてだったので実は少し驚いた。こんな荒涼としたザレ場に群生しているのが全くの予想外だったからだ。しかも想像してたより小さい。可憐な花だった。花の盛りはもう過ぎていたようで、折からの強い日差しでぐったりしていたが、それでも女王と言われるだけの強さと美しさを充分に感じることができた。

f:id:arakabu625:20180801182711j:image(ザレ場のコマクサの群落)

 

13時過ぎ、燕岳(2763m)山頂に到達。頂上は狭いけれど360度の大展望だった。槍ヶ岳以外の山の名前を挙げることができない自分が悲しい。アイミ君は俺と同じように初めての北アルプスなのに、あれがなになに、これがなになにとやけに詳しかった。

f:id:arakabu625:20191029123245j:image(燕岳山頂)

 

■燕山荘の夜は更ける

燕山荘は2700mの稜線に建つ山小屋とは思えないほどきれいで清潔で居心地のいいところだった。北アルプス入門コースとして燕岳から常念岳の縦走ルートが大人気なのはこの山小屋があるからだと思う。ある意味、この縦走コースで山を知った人たちは不幸だとも言える。ここ以上のホスピタリティを兼ね備えた山小屋が他にあるんだろうかと思えるからだ。それはまだ今の俺にはわからないが。

f:id:arakabu625:20180801220839j:image(燕山荘)

 

早い夕食をとり、山小屋のオーナーの味わい深い話とホルンの演奏を聴いたあと、日の入りの景色を見るために再び外に出た。多くの人たちが同じように遥か彼方の稜線に沈もうとしている太陽を眺めている。日が落ちて夜に向かっていく山の景色を山の上で楽しむことは山に泊まる人たちだけの特権だなとしみじみ感じた。槍ヶ岳には雲がまとわりついていて、その姿が時々見えなくなる。その雲もほんの少し夕焼けに染まっているようだった。

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f:id:arakabu625:20180802123740j:image(もうすぐ夜だ)

 

そういえば、台風は今頃どこにいるんだろう。明日の天気はどうなるの?などと思いながら、燕山荘の夜は更けていった。

 

(前編ここまで。後編に続きます)

後編はこちらから