'19年10月5日~7日 秋の涸沢テント泊の旅、奥穂高岳も登るど~!(1日目)
(涸沢に着いた。テント、テント、テント!)
⛰️今私は、上高地を夕刻に出発した高速バスの中でこのブログを書いています。横にはぐったり疲れて眠っているアイミ君、通路を挟んで楽しそうに話をしているちか&まり。この3日間よくもってくれた天気は、先ほど休憩に寄った諏訪サービスエリアですっかり雨模様に変わっていました。バスは夜の雨の中央自動車道を、新宿に向かって快調に走り続けています。
今回は、縦走部の4人で行った北アルプスの涸沢から奥穂高岳を巡る山旅のお話です。登山愛好者にとって一度は行ってみたい憧れの場所、涸沢。縦走部の面々にとっても生まれて初めて訪れる場所です。一体どんな山旅となりましたでしょうか。それでは、ご一読のほどよろしくお願いいたします。
■前夜
金曜日(10月4日)の夜、かねてより「会社から戻って我が家の滞在時間1時間!」と妻に宣言していた甲斐あって、帰宅したら晩ご飯も風呂もすでに準備万端だった。缶ビールをプシューッと開けたら、「あなた運転じゃないの!?」と妻が慌てていた。
大急ぎでご飯と風呂を済ませ、お金と健康保険証とSuicaを革財布から山財布に移して準備完了。珍しく玄関まで見送りにきた妻に体重計を持ってきてもらい、荷物の重さを計るとジャスト17㎏だった。水は現地調達を前提にプラティパスもナルゲンボトルも空っぽのままだし、かなり荷物を削ぎ落としたつもりだったのだが…。500mlのジャスミンティーのペットボトル1本だけをリュックのポケットに突っ込んで、20時半頃家を出た。出掛けに妻が「日曜日は何時に帰るの?」と言うので、「ん?日曜日は帰らんよ。帰るのは月曜の夜遅くだよーん!」と言って家を飛び出した。
そうして待ち合わせのバスタ新宿に着いたのが21時半。約束の時間より30分も早く着いてしまった。(いかんいかん、一人で空回りしている。落ち着かねば)先に4階の出発フロアまで上がってみんなを待つ。しばらくして、テント泊の荷物でパンパンに膨らんだ大型リュックを背負ったアイミ君、ちかちゃん、まりちゃんと無事合流した。
(22時25分、バスタ出発)
今回の山行計画の概要は次の通りだ。
【移動】高速バス(新宿⇔上高地)
【1日目】上高地~横尾~涸沢(テント泊)
【2日目】涸沢~奥穂高岳~涸沢(テント泊)
【3日目】涸沢~横尾~上高地
【概算費用】高速バス15,200円、テント1,000円×2日、山小屋飲食約10,000円(ビール×6😅)、風呂600円
行動時間は3日間とも約7時間となった。
■上高地~横尾
朝の5時過ぎ、バスは夜明け前の上高地バスターミナルに到着した。超熟睡の俺。お前よく眠ってたねー、と隣のアイミ君が感心していた。アイミ君は全部合わせても1時間くらいしか眠れなかったらしい。
インフォメーションセンターみたいなところで朝食と準備を済ませ、まだ薄暗いバスターミナルを6時5分に出発した。
6:05
上高地は夏に槍ヶ岳を目指したとき以来だから、周囲の景色はまだ記憶に新しい。梓川の左岸を歩くとすぐに河童橋が見えてきた。3人を橋の途中まで行かせて記念撮影し、右岸には渡らず引き返す。
6:12
明神までは右岸コースのほうが雰囲気のいい散策路になっているのだが、「こんな重いザック担いで、歩く距離は短いほうがいいに決まってる!」というちか部長の一声で左岸を行くことにした。地図を見ると確かに左岸コースのほうが明神までコースタイムで15分短くなっていた。
梓川の遥か向こうに穂高連峰が見えている。天気もまずまずのようだ。どうか楽しい3日間になりますように。
6:13
今回のちかとまりの背中の荷物は15kgくらいあるらしい。体感的には俺やアイミ君の17~8kgのリュックよりも辛いだろう。今日目指す涸沢は上高地から遠く、そして2,300mの高所にある。がんばれ、ちかまり!
(リュックがでかい)
明神、7時7分到着。小休憩。
徳沢、8時5分到着。小休憩。
横尾、9時15分到着。大休憩。
順調に横尾までやって来た。この夏に槍ヶ岳を目指して歩いたときは素通りした横尾大橋を初めて渡る。涸沢という天上世界と下界とを隔てる結界をまたぐ気分になった。
横尾大橋に向かう俺(真ん中)
この先に涸沢がある(9:32)
■横尾~涸沢
大きな大きな屏風岩とも初ご対面だ。下りの時に気が付いたが、横尾から見るとこの屏風岩を擁する屏風ノ頭という山塊の向こう、真裏に涸沢が位置している。だから、横尾からはずっと屏風岩を左に見ながら歩くことになるのだ。
(屏風岩)
横尾から1時間ほとで本谷橋に到着し、大休憩をとった。少しちかちゃんのへたり具合が激しいようだ。彼女一人だけ玉のような大汗をかいていた。
10:37 本谷橋
ちかちゃん(左下)
ここまではほぼコースタイム通りだ。ここ本谷橋から涸沢までのコースタイムは2時間となっているので、順調にいけば13時前には涸沢に着くだろう。
10:50 本谷橋を出発
登山道はここまでは緩やかな道が続いたが、本谷橋から先は勾配もきつくなり、足下も岩だらけの山道になってきた。途中、何度かガレ沢をトラバース気味に横切る。トラバース道には明らかに落石と思われる大きな岩が道をふさぐように所々転がっていた。《ここで休憩するな》という表示板が中国語や韓国語でも書かれていて、少し怖かった。
(落石注意)
しばらくすると、俺の後ろを歩いていたちかちゃんと俺との間が少しずつ開くようになってきた。ペースを落としながら、後続の登山者に何度も道を譲る。小さな休憩を挟みながらちかちゃんの様子を伺うと、少し顔色も悪い。最初高山病を疑ったが、頭は痛くないと言うし、もしかしたら軽い熱中症かもしれない。いつの間にか日差しが強くなっていた。
(後ろからまり、ちか、俺)
辛そうなちかちゃんに何度も状態を聞くが、その度に「大丈夫、それよりも先に行ってテント張る場所取っといて」と言うばかり。見るからに大丈夫そうではないが、俺もどうしたらいいのかわからず、ちかちゃんのペースでゆっくりと涸沢を目指した。
12:37 奥穂高と吊り尾根が見えてきた
そうこうするうちに、こんもりした森の上に吹き流しが見えてきた。きっとあそこが涸沢ヒュッテだ。「もうすぐだよ、ちかちゃん!」と誰かが言った。
(もうすぐだ)
(最後の階段を上るちかとまり)
■涸沢にて
13時20分、コースタイムから30分ほどの遅れで涸沢ヒュッテに到着。ヒュッテから見下ろすように広がるテント場には無数のテントが見える。山の雑誌で何度も目にしてきた光景がそこにあった。
(紅葉と色とりどりのテント)
凄い、これが涸沢か。
俺は目の前に広がる景色に言葉を失った。
(絶句)
もっとゆっくり景色を堪能したかったが、もう腹ペコ。しかし、景色よりも昼メシよりもやらなくちゃいけないことがある。まずはテント設営だ。俺がテントの受付をしている間にアイミ君とまりちゃんが設営場所を探しに行った。ちかちゃんは岩に腰を下ろして、しばしの休憩だ。
涸沢のテント場は聞きしに勝る状況だった。テントを張るスペースはまだ十分にあったが、とにかく岩だらけなのだ。こんなところで寝れるわけないだろ!というように角張った岩がゴロゴロしている。(ほんとにこの上にテントを張るのか?みんないったいどうしてるんだ??)
翌日、多くのテントが撤収した跡を見て納得したのだが、岩が除かれて整地されている場所はそれなりにあるようだ。しかし、そんなスペースはすぐに埋まってしまい、後から来た人はこのゴツゴツした岩の上に設営するしかなくなるのだ。岩の上でも寝れるようにタタミ一畳程度の大きさのベニヤ板が貸し出されてはいるが、その数もそれほど多くないみたいで、俺たちが到着した時には全部貸し出されたあとだった。
(整地するちかまり)
俺も岩を並べたりどけたりしながら、人ひとり寝れるだけのフラットなスペースを作ろうとしてみたが、なんだかきりがない。もういいやという感じでテント設営に移った。ペグを打ち込めるような場所ではないので、すべての支柱には岩を重しに使うが、これは想定内。俺は少しでも荷物を軽くするためにペグは家に置いてきたくらいだ。ただ、岩を取り扱うのに慣れてないので、何か所も手を擦りむいてしまった。
(なんとか建てたが…)
ようやく立ち上がったテントにマットを敷いて寝てみると、テントのフロアシートが破けてしまいそうなくらい尖った岩の感触が三ヶ所ほどある。外からテントの下に手を伸ばしてその岩を取り除き、何とか横になれそうなスペースを作ることができた。ふう、すげえなあ、涸沢。
(ちかまりのテント。その岩の上でホントに二人寝れるのか?)
15時過ぎ、アイミ君もちかまりもなんとかテント設営が完了したようなので、涸沢ヒュッテに戻って昼メシにした。しばらく並んだが、無事に生ビールとおでんセットをゲット。さあ、ヒュッテのテラスで念願の乾杯だ。ブログや雑誌で何度も見てきた涸沢ヒュッテのおでんとビールがようやく現実のものになった😂ちかちゃんも旨そうにビールを飲んでいた(良かった良かった)。
(カンパーイ!)
晩ごはんまで時間があるので、一旦テントに戻って仮眠をとることにする。
15:56
晩ごはんはテントの近くで車座となり、それぞれ自炊をした。俺は何を作ったっけ?そうだ、パスタを食べたんだった。みんな上下ダウンを着込んでいるので全然寒くない。缶ビールやホットワインを飲みながら、初めての涸沢の夜をみんなで語り合った。
18:06
「月が出てるよ」と誰かが言ったので振り返ったら、前穂高岳(3,090m)の頂上から綺麗な半月が顔を出していた。裏山から出てくる月は何度も見たことがあるが、3,000m峰の頂から昇ってくる月はなにか宇宙的なものを感じさせる。
楽しい夕げがお開きになり、トイレのためにヒュッテに行ったら、テラスに三脚のカメラを構えた人たちがズラリと並んでいて驚いた。順番待ちの人たちまでいるではないか。みんな夜の闇に浮かぶ色とりどりの無数のテントの灯りを写真に納めようとしているのだろう。俺もスマホを夜景モードにして一枚、パチリ。
19:18
3,000mの山の頂に架かる月の明かりと、夜の山あいに瞬く宝石のようなテントの灯り。涸沢は夜も楽しいということを知った。
俺はシュラフに潜り込み、ラグビーワールドカップ・日本vsサモア戦のラジオ中継を聞きながら、いつしか深い眠りに落ちていた。
(1日目終わり。秋の涸沢テント泊の旅(2日目)に続く)