'19年7月26日~28日 目指せ槍ヶ岳!(3日目)
目指せ槍ヶ岳!(2日目)からの続きです。
■下山
槍ヶ岳3日目の朝を迎えた。
4時半から朝ごはんを食べて、6時までには出発しようというざっくりな予定を立てていた。昨日の天気予報によると、台風6号は日付が変わる頃には温帯低気圧になって北の方に抜けるという。じゃあレインウェアは着なくてもいいかなと期待していたが、出発の時の写真を見るとみんなレインウェアを着ている。ひどい雨だった記憶はないが、雨はまだ残っていたんだろう。
5:55 ヒュッテ大槍を出発
まずは、ヒュッテ大槍から登りに通った槍沢ルートまで急な斜面を下っていく。「ヒュッテからの下りは急坂だから気を付けて」とモンベル御徒町店の店員に事前に言われていたので、ヘルメットを被って出発した。しかし、実際は大きくジグザグにルートが取られていたので、心配するほどのことはなかった。
ジグザグに下る
それよりも、その間の斜面がお花畑と言ってもいいくらいに沢山の高山植物が咲いていて俺たちの目を楽しませてくれた。クロユリも沢山咲いていた。前日にヒュッテ大槍で買ったバッジにデザインされていた花が気になって「これは何の花?」と尋ねたら、「クロユリです。今の季節、この辺の斜面にいっぱい咲いてますよ」ということだったので、今朝はそのクロユリを見つけるのを楽しみにしていたのだ。
真ん中にクロユリのデザイン
斜面で見つけたクロユリ
写真を撮りながらのゆっくり下山はこの斜面までで、その後はひたすら無言で下った。今日は上高地までコースタイムで優に8時間を超えるロングトレイルだったのと、レインウェアを脱いだ後も時折強い雨が降ってきてウインドブレーカーを濡らし始めたので、先頭を歩く俺は早く先に行きたいと焦っていたんだと思う。さらに俺は最近ユーチューブで覚えた《山道の下り方》なるものを実践していたので、それに夢中になるあまり、かなりペースが上がっていたのかもしれない。槍沢ロッジまであと4~50分かというあたりで、俺の後ろを歩いていたちかちゃんが転倒し、足首を強く捻ってしまった。
痛そうだったが、なんとか歩けるようでホッとする。そこからはペースを落とし、槍沢ロッジまでたどり着いた。すぐに靴下を脱がせて患部に消炎スプレーをたっぷり噴霧し、念のためにロキソニンを飲んでもらう。そこからは俺自身が足首を捻挫しているつもりになって、ペースをさらに落とした。
実はその頃から俺も足にかなりの痛みが出ていた。もう持病と思ってあきらめ気味なのだが、両足親指の付け根がジンジンと痛い。昨日も一昨日もだいたい3時間歩き続けると痛み出した。今日もさっきからかなり痛くなってきていたのだ。今回は初日から小指の腹にできた水ぶくれの水を針で抜いたりと、俺自身も足のトラブルが多かったな。2ヶ月振りの山歩きだったからかも知れない。
ゆっくりペースだったので何人もの後続者に道を譲ったが、お陰でちかちゃんも足を止めることなく横尾まで無事に下りてくることができた。ここまで下りてくればもうひと安心。あとは高低差のほとんどない遊歩道を上高地までゆっくり歩いて行けばいい。とは言え、まだコースタイムで3時間以上かかる道のりなので気は抜けないが。
11:28 横尾
横尾からさらに徳沢まで下って昼ごはんにした。井上靖の小説《氷壁》ゆかりの山小屋、《徳澤園》のみちくさ食堂でカレーとビールをいただく。思わず「この3日間で食べたもののなかで一番旨い!」と口に出してしまうほど体に染み込むような美味しさだった。実はここでその後に起きる事件の種をまりちゃんが蒔いてしまうが、それはもう少し後の話だ。
徳沢からさらに明神を経由して、15時頃にようやく河童橋まで帰ってきた。今朝ヒュッテ大槍を出発してから9時間以上が経っている。ふぅ~、よく歩いたもんだね。みんな、お疲れさま。
15:00 河童橋にて
平日で時間も早かった『行き』に比べると、今日は日曜日だし、上高地には大勢の観光客がいた。決していい天気とは言えなかったが、さすがに国内有数の観光地だけのことはある。
向こうに見える河童橋も人でいっぱい
上高地バスターミナル
バスターミナルからタクシーに乗って沢渡駐車場へ向かう。駐車場に着くとすぐに湯を沸かし、車に積んでいたドリッパーでコーヒーを淹れてみんなに振る舞った。槍ヶ岳に向かう稜線で『岳』の三歩が老夫婦に淹れたコーヒーを真似たつもりだったが、みんなは気付くはずもない。
タクシーの運転手に教えてもらった温泉に入ろうとしたときに事件は起きた。まりちゃんが「財布がない」と言う。徳澤園で昼ごはんを食べたときに忘れてきたに違いないと電話をしたら、財布はちゃんと届けられていてホッとひと安心したのだが、俺たちは最初「え~っ、今度はまりちゃん!?」と驚くやら呆れるやら。なぜなら、昨日泊まったヒュッテ大槍でアイミ君も財布を置き忘れて、一瞬青ざめる事件があったばかり。そのときも山小屋の人が保管してくれて事なきを得たのだった。
「俺たちももう50代後半である。還暦間近のおっさんおばさんという自覚を持って、置き忘れにはくれぐれも気を付けよう!!」
今回の山旅で得た最大の教訓はこれだった。そして、もう一つ。山には悪い人はいないんだなー、ということをしみじみ感じた二つの財布紛失事件だった。
温泉近くの食堂に入り、夕食をとる。俺はカツ丼をノンアルコールビールで流し込んだ。
17:41 カンパーイ!
その後、18時過ぎに沢渡を出発し、渋滞ゼロで22時前に新宿駅前まで帰り着く。こんな時間だというのに新宿は上高地をはるかに上回る人でごった返していて、目の前には北アルプスの山並の代わりに不夜城のような高層ビル群が林立していた。
こうして、長いようで短かった縦走部3日間の槍ヶ岳を巡る山旅は終わった。
(終わり)
おまけ
出発の朝。河童橋にて
同じく河童橋(byアイミ君の一眼レフ)
こちらは明神橋(byアイミ君の一眼レフ)
5○歳の誕生日。槍沢ロッジにて
アイミ君の一人槍ポーズ
(おしまい)
ここまで読んでいただき、大変有難うございました。それでは、また!
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