'19年1月12日 北横岳で雪山入門!

f:id:arakabu625:20191029080518j:image(北横岳山頂にて)

⛰️2019年、新年早々から縦走部は雪山に挑むことになりました。冬の間、関東近郊の低山で鍋パーティーするだけじゃもったいないモッタイナイ。山登りには雪山登山という素晴らしいカテゴリーがあるのです。目指せ、銀嶺を!開け、雪稜への扉を!

 

ということで、セカンドシーズンの迎珍縦走部は一段とパワーアップいたします。みんな、気合い入れてくぞー!なんちゃって😁

 

以下、今年の部活動一発目のレポートでございます。どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

 

◼️次は雪山!?

誰が言い出したのか。多分ちかちゃんかまりちゃんか、それともアイミ君か。とにかく、気がついたら『次は雪山だ~、北横岳だ~』ということになっていた。北横岳?なんだそれは、聞いたこともないぞそんな山。

 

去年の高水三山の反省会のときだろうか?『次は北横岳ね♪』なんて言われて『オッケー!』と返事したような気はする。どうせ酔っ払ってたんだろう。しかし、俺は本当に北横岳がどこにあるどういう山なのか、それまでまったく知らなかった。2年前から買い始めた月間雑誌《山と渓谷》も雪山特集をやってる月だけは(俺には関係ない)と買ってなかったし。いくらなんでも雪山は無理っしょ、てな感じだったのだ。

 

こうして、俺の雪山準備が始まった。ネットで徹底的に調べる。《さらに20万円出費する覚悟のないやつは雪山に来るな》なんて恐ろしいことを書いてる人がいる。テント泊装備に匹敵する費用がかかるというのか?いや、もっとやりようがあるはずだ、研究しよう。

 

雪山準備はどうやら大きく次の3つのブロックに分かれることが見えてきた。

  1. 足回り(特に靴)
  2. ウェア(特にアウター)
  3. 防寒用品(特に手袋)

 

それぞれ語り始めると長くなってしまうので、ここでは簡単に今回の北横岳に向けた俺の装備の概略を記して山行本編に移ろうと思う。

 

◼️俺の装備

 1. 足回り

靴は夏靴(3シーズン用)のままで行くことにした。保温材入りの冬靴は値段が高いし、まだそこまで踏み切れない。俺のアルパインクルーザーのアッパー素材は2.2mm厚のヌバックレザーなので、多少の冷えには対応できるだろう。アイゼンはモンベルのチェーンスパイクを持っている。昨シーズン初冬に奥秩父両神山を登るときに買って、そのあと関東に大雪が降った翌週に縦走部で行った高川山でも活躍してくれた。それでいいやと思っていたが、夏靴のソールにも付けられる10本爪の軽アイゼンをモンベルで見つけ、それほど高くなかったので念のためにと購入した。

f:id:arakabu625:20190121093407j:imageスノースパイク10(モンベル社HPより)

 

さらに、万が一のための装備として買ってしまったのがこれ。マジックマウンテンのワカンだ。おいおい、必要なのか?

f:id:arakabu625:20190121094015j:imageトレースライン(webより)

 

 2. ウェア

モンベルのベースレイヤーはいくつか持っていたが、今回スーパーメリノウール(MW長袖)を購入。ウール素材のウェアは良い良いとよく耳にするが、靴下以外のウェアで初導入だ。ミレーのアミアミの上に着ることにする。迷った末に同じメリノウールのタイツも出発の前日に買った。こちらは薄手のLWにした。

 

アウターは、上はソフトシェル、下は中厚手のパンツ。何かあればレインウェアの上下を着ればいいやと思っていたが、行きつけの浦和のアウトドアショップで顔馴染みになった店長に勧められたノースフェイスのオーバーパンツ(税抜32,000円)を衝動買い。今回の雪山準備で最高額の買い物となった。しかも結局使わなかったし…
f:id:arakabu625:20190121101134j:imageザ・ノースフェイス、オールマウンテンパンツ

 

 3. 防寒用品

これはこまごまとしたものを色々購入した。薄手のバラクラバ、フリース素材で耳まで覆えるビーニーキャップなどの顔回り用品しかり。しかし、なんといっても調査に時間をかけ、お金を使ったのは手袋関連だ。目標はマイナス20℃に対応可能と思われるシステムを限られた予算のなかで構築すること。想定した場面は、極寒の中でのラッセル。寒いけれど手汗をびっしょりかくようなケースだ。衣服と同じようにインナー、ミッド、アウターの3レイヤーで準備したが、今回の北横岳では明らかにオーバースペックになったので説明はまたの機会に譲ろう。結局、アプローチから樹林帯までを想定していたフリース(ランニング用)+防風オーバーグローブ(サンダーパスグローブ)という、いつもの冬の組み合わせで事足りてしまった。

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モンベル、サンダーパスグローブ

 

一応準備は整った。さあ、いよいよ北横岳に向けて出発である。

 

◼️北横岳へ

土曜日の早朝、部長のちかちゃんが手配してくれた新宿発7時ちょうどのスーパーあずさ1号に乗るため新宿駅に向かう。メンバー全員と9番線ホームで合流し、乗車した。乗客はざっと見て一般旅行客2割、登山客3割、スキー客5割といった感じだろうか。スキー客が多いので、いつものおっさんおばさん率が低い。

 

座席に落ち着いて、あらためてアイミ君の装備を見てみた。すぐに目についたのはミレーのリュックの背中にくくりつけられている黒いケースだ。

「もしかして、ワカン?」

「うん」

さすがアイミ君、買ってたのね。俺は昨日までのゲレンデの様子と今日の天気予報を見て、ワカンは置いてきてしまった。

 

続いて足元を覗きこむ。ん?靴が違うぞ。見慣れない靴だ。なんだかごついぞ。

「ひょっとして、冬靴買ったの?」

「うん」

「じゃあ、12本爪アイゼンも?」

「うん、セミワンタッチにした」

さすがだ、さすがだよアイミ君。それでこそアイミ君だ。俺が名付けた”暴走列車”の面目躍如じゃないか。なんて素敵なやつなんだ君ってやつは。これで俺も心置きなく雪山準備ができるってものだ。

スーパーあずさに乗ったつもりが、雪山行きの暴走列車に乗っちまったぜ~。トホホ。

 

9時8分、スーパーあずさ茅野駅で降り、タクシーに乗り換えた。ここから北八ヶ岳の山腹にあるロープウェイ乗り場に向かい、ロープウェイの山麓駅から山頂駅(2,237m)まではゴンドラで一気に高度を上げた。下はスキー場になっていて、ゲレンデにはリフトもあるようだが、このゴンドラもスキーヤーで満員だった。

f:id:arakabu625:20190121165720j:imageロープウェイ乗り場に並ぶスキーヤー

 

10時20分頃、スキーヤーに混じって北横岳雪山登山の起点となる山頂駅に到着。ついに本格的な雪山にやって来たんだ。さっ、寒い!

f:id:arakabu625:20190121170157j:image山頂駅

各自準備に取りかかったが、俺はゲイターとアイゼンの装着順を間違えてかなり手間取った。アイゼンを先につけてからゲイターで覆うものだと思い込んでいたので、ソールに渡す樹脂のベルトをアイゼンの下に潜らせるのに苦労したのだ。ストックにはスノーバスケットも着けた。邪魔になるのでサコッシュはリュックに詰め、帽子をビーニーキャップに替えた。スマホには低温シャットダウン対策として、使い捨てカイロの貼るタイプを裏面にベタ~っと貼ってみたが、どうなることやら。

 

そんなこんなで準備完了。木々に雪は積もっていないが、地面は見渡す限り白銀の世界が広がっている。

f:id:arakabu625:20191029080614j:image10:38

 

坪庭を時計回りに歩いていくと、途中から左に登山道が分岐していた。いよいよ登りだ。登り始めてすぐにアイゼンを着けているグループを追い越した。なんでスタートから着けなかったんだろう?

 

樹林帯を登る。気温が低い。手袋の中の指先が凍えている。準備の時に手袋を外していたので、冷えたままなかなか体温が戻らないようだ。気が付いたら足先も凍えていた。やっぱり保温材入りの靴でないと駄目なんだろうか。もう少し様子を見てみよう。

f:id:arakabu625:20190122224915j:image樹林帯を行く俺

 

12本爪アイゼンのベルトがうまく締まっていなかったのか、アイミ君が何度か立ち止まった。俺も含めて初心者ばかりだ。これからみんなで慣れていこう。雪山は道具の使い方や機能など覚えなくちゃいけないこと、経験しなくちゃいけないことが盛り沢山なのだ。

f:id:arakabu625:20190122190804j:image中に着ていたフリースを脱ぐ二人

 

登りながら登山道の雪を足の裏で感じてみる。べちゃべちゃしていないし、ゴリゴリ凍ってもいない。低山で雪が積もると、昼間の暖かさでいったん融けた雪が夜の寒さで再び凍るということを繰り返すのでザクザク・ゴリゴリした雪道になりがちだが、この登山道の雪は踏みしめて蹴り出すとキュッキュッと音が鳴っているような感触がある。踏み固められているが、すぐに崩れてしまうような固まりに感じた。ここ最近は降雪もなかったはずなのに、積もったばかりの雪のようだ。さすが標高2,300mの雪は違うもんだ。


11時20分過ぎに北横岳ヒュッテ前に到着。ここまで45分くらい。軽く休憩を取る。
f:id:arakabu625:20190122191459j:image11:26 ちかちゃんとまりちゃん

f:id:arakabu625:20190122224319j:imageアイミ君と俺


ちかちゃんのリュックに赤いヒップソリを発見。アイミ君と二人がソリを持ってきていたが、結局使わずじまいだった。

f:id:arakabu625:20190122191734j:image今度やろうな!

再び登山道に入り、樹林帯を登る。手袋の中でかじかんでいた指先が温かくなってきた。夏靴のなかでキンキンに冷えていた足先も血行が戻ってきて、今は逆に熱を帯びているようだ。北横岳でも体を動かせば血流が増えて、手足の末端まで温かくなるのは同じなんだということが分かった。しかし、多分それもどこかに限界があって、もっと厳しい気象条件になれば今回のような手袋や夏靴では耐え切れない冷えを感じるんだろう。


ヒュッテから15分ほど経った頃、樹林帯を先頭で登る俺の目線の先で視界が開けてきた。やっと稜線に出たのかなと思ったら、なんとそこは北横岳の山頂だった。なんだかあっけなく着いてしまった感じだ。11時53分、北横岳南峰(2,471m)踏破。

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ヒュッテからすぐだったので、あれもう着いちゃった?って感じだったが、そこはさすがに2,400mを超える標高。ほぼ360度の素晴らしい景色が広がっていた。南八ヶ岳が近くに見える。赤岳が相変わらずのド迫力だ。

f:id:arakabu625:20190122194638j:image南八ヶ岳。真ん中に赤岳


遠くに目を凝らすと南アルプス北アルプスも見える。あれは槍ヶ岳じゃないか?どこどこ?ああそうだ、きっとあれは槍ヶ岳だ。

f:id:arakabu625:20190122195413j:image北アルプスを臨む

 

ちかちゃんの背中のヒップソリが強い風にあおられていた。飛ばされるなよ~

f:id:arakabu625:20190122201527j:imageブワッ

南峰からすぐとなりの北峰(2,480m)に移動した。北峰の方が少し標高が高い。こっちの山頂からも360度の大展望だ。しかし、風が強い。北横岳の山頂としてはまだまだ可愛いレベルの風だろうが、俺たちには十分すぎるほどの強風だ。

f:id:arakabu625:20190122201305j:image完全防備の二人。顔が見えないぞ~

 

山頂で温度計を見たらマイナス5℃だった。風速1mにつき体感温度は1℃下がるというが、このときの体感温度はマイナス15℃あたりだろうか。経験のない俺にはまだ風速の判断材料がない。ちかちゃんの背中のそりのあおられ具合をみて、風速何メートルだねといつか言えるようになりたいものだ。

f:id:arakabu625:20190122210245j:image北峰山頂にて

 

北峰での眺望を堪能し、記念写真を撮ってそそくさと下山を始める。北横岳ヒュッテまで下りてきて、ヒュッテ横の空いたテーブルで昼食をとった。

f:id:arakabu625:20190122210508j:image12:37


ヒュッテのトイレを借りるためにアイゼンを外したが、装着順番が逆なのでまずゲイターから外さなくてはいけない。不便なゲイターだなあ、買い直さなくちゃいけないなあと思いながら両方を外してトイレに行った。(順番が逆なだけ。ゲイターのせいではない)


昼食後、ヒュッテの脇から《七ツ池》という標識があるほうへ下りてみた。メインの登山道と比べるとずいぶん踏み跡が少ない。池の一つに着いた。凍りついた池の上に恐る恐る乗ってみるが、がちがちに凍りついていてびくともしない感じだった。

f:id:arakabu625:20190122211115j:image13:23


池の周囲に足を踏み入れてみると、ズボズボッとひざ上まで雪に埋まってしまう。せっかく持ってきたんだからワカンを付けて歩いてみたら?とアイミ君に勧めてみたが、付け外しが面倒だと嫌がった。「陸サーファーみたいなものね」とあとで女性陣から突っ込みを受けていたことを付記しておこう。

f:id:arakabu625:20190122211245j:image池の上

 

14時前、北横岳ヒュッテから30分ほどで坪庭まで下りてきた。もうロープウェイの山頂駅まではほど近いが、遠回りに坪庭をぐるっと一周して駅へ戻ることにする。途中で急な下り坂が出てきたので、ちかちゃんにソリで下れば?と冗談交じりに言ってみたが、滑落事故になってニュースになったらいやだと頑なに断っていた。そりゃそだね。

 

坪庭の周回道と縞枯山からの道が合流して山頂駅へ続いている。スノーシューを履いて楽しそうに歩いていた男女とすれ違った。広い雪道は踏み固められており、とてもスノーシューの出番ではないと思うが、ここは雪山入門者のメッカ・北横岳だ。みんな新しく導入した雪山道具を試して楽しんでるんだろうなと勝手に想像する俺だった。アイミ君もワカン試してみたらよかったのに。

 

14時20分頃だったか、ようやく山頂駅に到着。みんなで雪山装備を解いた。

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ここからはロープウェイとバスを乗り継いでJR茅野駅へ。茅野駅からは《あずさ26号》で新宿へ向かう。夜の新宿は小雨が降っていたが、みんなジャケットのフードをかぶり、駅近くの居酒屋に駆け込んだ。
f:id:arakabu625:20190122215444j:image18:48 かんぱーい♪


縦走部初めての雪山登山は、こうして無事に終わった。


初めての本格的な雪山、みんなはどんな感想を持っただろう。まず寒さ。一人一人寒さに対する耐性が違うしウェアも違う。今回のウェアリングで十分だと感じた人もいれば、もっと寒い山だと厳しいかなと感じた人もいただろう。次に向けて足りないところを補っていこう。


次に足回り。アイゼンはチェーンスパイクから本格的な12本爪までバラバラだった。今回に限ってみればチェーンスパイクで足を滑らせている人はいなかったし、12本爪のアイミ君は歩きにくいからチェーンスパイクに履き替えようと言っていたほどだ。靴もアイゼンも行く山や雪の状態によってチョイスしていけばいいんだろう。


個人的には、今回の北横岳で多くのことを学んだつもりだ。これからも雪山の経験値を上げていって、今後の山行に活かしていきたい。ほんの2ヶ月前まで「いくらなんでも雪山は無理っしょ」と思っていた俺だが、新しいことにチャレンジするのはやっぱり楽しい。それが山ならなお楽しいってなもんだ。

 

終わり

 

ところで、坪庭のジャンボキツツキをご存知だろうか。北横岳のことを調べていると、ブログによく出てくる坪庭の名物モニュメントだ。

f:id:arakabu625:20190123070949j:imageジャンボキツツキ(webより)

北横岳から帰ってきたあと、縦走部内で『そういえばキツツキどこにいたんだろうね』と話題になった。チェックするのをみんな忘れていたのだ。ところが、俺がなにげに撮った写真のなかに一緒に映り込んでいたのをちかちゃんが発見したので、ご紹介しよう。

f:id:arakabu625:20191029082308j:imageこれだ。ん?見えない?

f:id:arakabu625:20191029082331j:imageここ!

 

「知らないうちに一緒に記念撮影してたんだね」とは、まりちゃんの弁。

 

おしまい