乙女椿(おとめつばき)のこと
2018.3.21撮影
🌺我が家の駐車スペースと隣接して、古い二階建てのアパートが建っている。以前は一人暮らしのおじいちゃんが一階に住んでいたが、今は空き家だ。そのアパートの狭い庭に一本の乙女椿が植わっている。今回はその乙女椿のお話。
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樹高2.5mほどのその乙女椿がつけた花を初めて見たときは、(これが椿?まるで薔薇のようだ)と驚いた。そもそもこれまで椿の花をじっくり眺めたことがなかったというのもあるが、心底その美しさに見とれてしまったことをよく覚えている。私がこれまで椿に抱いていたイメージは《侘び、さび》《和風》《お茶花》といったものだったが、この乙女椿の花はどうだ。派手さと上品さと、和と洋が絶妙にバランスされた、まるで芸術品のようじゃないか。
2016.4.3(見とれる…)
毎年花が咲くと写真に収め、少しだけいただいて備前焼の一輪挿し(徳利だけど)に活けてきた。スマホの画像データフォルダーで「花」と入れて検索したら、これまで私が撮り貯めていた膨大な画像の中から他の花に混じってこの乙女椿の写真がたくさん出てくる。開花する時期が年によってまちまちなのか、データの日付は2月から4月まで幅があったが、どの年の乙女椿も大変美しい。
2018.4.1(活けるとまた映えるなぁ…)
この乙女椿は我が家の駐車スペースのフェンスに寄りかかるようにして枝葉を広げていて、陽の光は我が家側から差し込むので花芽は全部こちらに向けてつく。つまり、満開の乙女椿を愛でることができるのは私と私の家族だけなのだ。(実質、私一人だけのために咲いていると言っても過言ではない!)
2018.3.21(フェンス越しに…)
ところが、2018年の夏に事件が起きた。空き家だったアパートの一階を近所の電気工事会社が借りて、椿が植わっている庭が資材置き場になった。そして、いつのまにか乙女椿の木がバッサリと切られてしまったのだ。
「すいませーん。お宅に木が張り出していてご迷惑だったでしょ。この前植木屋さんに頼んで切ってもらったんですよ」と社長の奥さんに声をかけられて、私は初めて乙女椿が伐採されていたことに気が付いた。樹高は今までの半分以下、1mもないくらいまでに切り詰められている。私は《絶句!》した。
失意のままその年の冬が終わり、明くる2019年3月のこと。見るも無残に背の低くなった乙女椿は、しかし数えるほどだが私の膝くらいの高さで無事に花を咲かせてくれた。葉の陰に隠れてひっそりと咲いていたので、私はしばらく気づかなかったほどだ。
2019.3.9(おお、咲いてくれてたのか…)
(いかん、やっぱりこのままではまずい。早くあれを成功させなければ!)
実はもう何年も前からこの乙女椿の挿し木にチャレンジしていたのだが、失敗が続いていた。(フェンス越しに眺めるだけではもう我慢できん、なんとしても我が家に嫁として迎えいれたい!)そんな感じに思っていた。
2016.6.25(しかし、失敗が続く…)
もうあきらめかけて、ここ何年かは止めていたのだが、この事件をきっかけに昨年再チャレンジ。しかし、またも失敗。何故だ?なぜなんだ?
そして今年、再び事件が起きた。
7月のある日のこと、測量会社の人が我が家を訪ねてきた。
「お隣のアパートの土地の測量をしますので、境界を接しているお宅に立ち合いをお願いしております」
「えっ?アパート取り壊して、何か新しく建つんですか?」と心配して尋ねる私。
「うちは測量を依頼されているだけなので、よくわかりません。ただ、一般的には土地を更地にして売る、もしくは建て替えるということでしょうね」と、測量会社の人が言った。
(まずい、今度は根こそぎ持ってかれる。もう今年がラストチャンスだ!)
たぶん6月頃だったと思うが、すでに今年も挿し木にトライはしていた。目の届かないところだとついつい水やりを忘れてしまうので、今回は玄関ドアの横に置いてみる。これなら毎日様子を伺えるし、ちょうどいい感じの日陰だ。しかし、慣れとは恐ろしいもので、玄関を出入りするたびに目に入っているはずなのに何日も水やりを忘れることがあったりする。水はけをよくするためにホームセンターで買った川砂を使っているので、水加減が少し難しいのだ。
2020.7.11(ラストチャレンジ中…)
(俺の乙女椿が撤去される。今回は失敗が許されん!)などと毎日思っていたわけではないが、そんなこんなで暑い夏が過ぎていった。
そして、9月。昨日のことだ。しゃがんで、挿し木の様子をじっくり眺めてみた。まだ葉っぱの緑を保ってはいるが、ところどころ茶色くなっているし葉っぱ全体に艶がない。花芽と思しき芽も膨らんできてないし、(今年もまただめかなー)とため息をつきながら、試しにひとつ抜いてみた。そしたらなんと根が出ていた。
2020.9.15(葉っぱに艶がない…)
(根が出てる~😂)
「やった!!!」
初めての発根である。何年越しの発根だろう。ここまで長かったなあ、ホント。しかし、まだ油断は禁物。ネットで調べてみても、この先の成功率は50%前後のようだし、鉢上げのタイミングも発根したらすぐにというものから1年後というものまで様々だ。何を信用していいか皆目見当がつかない。
ネットの情報を吟味した結果、とりあえず当面はこのままにして、10月に一部を鉢上げし一部は来春まで待つことにしようと決めた。
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果たして乙女椿は無事に根付いてくれるのか。まだまだ先は長そうなので、この項は一旦ここまでとしたい。変化があれば《今日の独り言》欄で報告させていただきます。
m(_ _)m。
(続く予定)
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